【第二章】息子と泣き虫パパ~生き別れの君へ

不安を抱えながら、迎えたバイクフィニッシュ

157kmを走破した達成感に反して

徐々に膨らむ解決策の見出せていない腰の激痛の不安

まずはバイクをラックにかけ、更衣室で一息つきます

汗でびしょびしょになった靴下を履き替え
ヘルメットから、ランキャップに
ゼッケンナンバーもラン用に交換

塩飴を口に放り込みます

ふぅぅぅううう
落ち着いて考えます

スイム、バイクと続いて、最後のランパート

ストロングマン、強い人になるには、この後、42.195kmのフルマラソンを走破する必要があります

フルマラソン、この一年頑張ってきましたが、厳密には完「走」したことがありません

そして、抱える腰の爆弾

走りきったとしても、確実に4時間以上はかかる道のり
そこにきての腰の痛みを抱えながら、走れるのだろうか

スタートしてから、6時間オーバー
時間は、昼をとっくに回っていました

歩いていたら、確実にタイムオーバー

果てしなく、そして果てしなく
遠く、そして遠く
全く先がみえません

この先どうなることか

不安は尽きません
しかし、考えていてばかりでは、始まりません

先へ進まなければ
僕にリタイアという選択肢はないのだから

そして僕は、一歩一歩、脚を前へ進みだしました

最後の勝負です

前日の試走で発覚した腰の痛み

原因を探る暇などなく、回復する手立てを模索します

スイムでは痛みはなかった
バイクでも痛みはなかった
ラン体勢でのみ発生する激痛

入浴してみたり、マッサージしてみたり
あらゆる手段をネットで探ります

そんなこんなで、就寝時間を迎えました

これ以上、起きていることは、明日の長い戦いに大きく影響します

レース前日に発覚した腰の激痛という大きな爆弾に対して

対処方法、解決策が見出せないままレースを向かえることになりました

話しをバイクパートに戻します

バイク走行距離、残り20km
快調に飛ばせば、一時間弱で、バイクパートが終わります

しかし、どんなに好調でも、拭いきれない不安があったのです

遡ることレース前日
—————

その日は、バイクを預託の日でした
※レース前日に運営側にバイクのチェックと共に預ける必要があります

午前中は、レースコースを1,000mほど試泳
普段プール泳ぎなので、久しぶりのオープンウォーターに不安を覚えるも

うん、調子は悪くない

そして、その後、バイク預託の為、20kmほどコースを試走

うん、調子は悪くない

レース前日、快調です

明日に期待がかかります

そして、ホテルに帰宅し、夕食前に、軽くラン

怪我をしてはたまらないので、歩くくらいの速度で、ホテルの周りを数キロと走り出す

その時です

ズキン！！

今までにない、刺すような腰の痛み

一次的なものかと思い、そのまま走り続けるも、あまりの激痛にラン試走を断念

今までにない腰の痛み

焦りと不安が一気に襲い掛かります

後でわかったのですが、大腰筋の損傷でした
体の奥にある深層筋（通称インナーマッスル）で、上半身と下半身をつないでいる筋肉が疲労していたようです

レースは明日

色々な手立てを考えますが、時間的にもう間に合いません

できる限り、思いつくワードで、ネット検索

腰　痛み　回復　原因　マッサージ　ラン　走れるように　復活

明日のレースのための就寝時間が迫ってきておりました

焦りだけが大きくなります

伊良部島を折り返した辺りからでしょうか
激しかった雨も勢いを弱めてきました

しかし、横風でまともにまっすぐ走れないような強風
ちょいちょい体力を削るアップダウンの連続
速度が60kmオーバーも出るダウンヒル

まだまだ先は長い

この後のフルマラソンの為に、脚を使わないように、脚を使わないように

補給食も忘れないように
食べると言うよりは、エネルギーが切れないように、摂取するという表現が正しいでしょうか

そして、エイドステーションでは、ウォーターボトルをもらい、頭からぶっかける

ロードバイクで颯爽と走るカッコいい姿は微塵もなく

体力、気力を削りながら、
ゴールに向けて
ただ進む

過酷と言う表現が本当にしっくりきます

——–

残り70km表示

残り40km表示

徐々にバイクゴールが近づいてきました

体が高揚していく感覚に反して、気は晴れませんでした

僕には、一抹の不安があったのです

抱えた爆弾です

今日から、GWですね
皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか

関東は強風ですが、日差しは良く、家で過ごすには申し分ない日です
筑波8時間耐久に向けて、家でバイクマシンを回しました
心地よい疲れを感じながら、ダラダラとしております

さて、ご愛読いただいておりますストロングマン参戦記
これから、佳境に入っていきます

ラストで、悲しんでいただいたり、お怒りになられてりする方もいるかもしれません
GW中に、読んでいただけるようにまとめております

今しばらく、お付き合いいただけますと幸いです

愛する子どもと自由に逢えない皆様へ

応援宜しくお願い致します

そんなこんなで人生を表したような伊良部大橋を渡り終えました

まだまだ先は長い
100k以上残っています

脚を使い切らないように
慎重に
そんな中・・・

ポツリ

ポツリ？

ポツリ

んんー？

ポツリ

・・・雨です
進むほどに、強まる雨脚

来ました、新しい試練

うーん、どうにもやすやすと、ストロングマンにはさせてくれないようです。

しかも、雨の降り始めが一番怖い（らしいです）
雨により、路面の埃が浮かび上がり、滑りやすくさせるのです
※イニシャルDで説明していました（笑）

滑りやすくだけではなく、その後は、水溜りが抵抗力を高め
勿論、他の競技者の落車巻き込まれなども発生します
また雨は体温を奪い、筋肉を硬直させます
これが一番きつい

しかーし！

とっさに、極力脚を使わない為の省力モードの走りから、筋肉をほぐす脚の使い方に切り替えました

筋肉の硬直を防ぎます
実は、これは、赤羽ハーフマラソンで経験済み
※なんとなんと、今までの経験が活きてきました！

とは言え、慎重に進むことに変わりはありません

僕は先を急ぎます

まさに、集大成に相応しいレース！

しばらく走ると

最初の難関、伊良部大橋です
※赤枠とのところです

全長3,540m

ビジュアルはこんな感じです

いやー、人生を象徴したような高低差

先は長いなぁ～

帰りもここを通るのです（T-T）

そして、バイクパートへ

走行距離157km
宮古島を一週半です

単純に考えて、僕の足では5,6時間かかる距離です

しかし、こちらも好調な出だし

ケイデンスは好調
風も心地よく
スイムの疲れは微塵も感じません

沿道の声援に、笑顔で応えます
「ありがとうございます！」「行ってきまーす！」

宮古島トライアスロンの島を上げての声援は有名で、皆さんが一生懸命、声援を送ってくれます

パワーがみなぎります！

そして、ペダルを回す脚に力を込めます

・・・ん？待てよ、このパターンは？
そうです、去年のアイアンマンと同じ状況

好調なスタートで調子にのって、バイクで単独落車を起こしました

ふぅぅうううう
深く息を吐きます

6時間におよぶバイクパート
まだまだ先は長い

調子にのった気持ちを押し込めます

そうだ、コツコツと、コツコツと

それが僕の生き方だ

勝負は始まったばかり

一斉スタート
1,500人強のトライアスリートが、一斉に海に飛び込みます

1種目目はスイム
距離にして、3km

1時間前後の攻防となるわけですが、
スイムは僕にとっての一番の得意種目

ここで手間取ってはいられません

早々に集団を抜けて、自分のペースへ

———-

宮古島の海はきれいで

海が透き通っていて

海底が見えるほどです

波でゆっくりと揺られる藻
遺跡を思わせる岩底
編隊を組みながらも機敏な魚の群れ

そして、なんと、海の底を優雅に泳ぐ亀が

なんと非日常的で、感動的な光景

息子に伝えたい
見てきたものを伝えたい
感動を持ち帰って、共有したい

レース中にも関わらず、そんなことを考え
———-

思考は非常にクリア

泳ぎはと言うと、体の可動も、呼吸も好調です
がむしゃら泳ぎでなく、自分の培った力量のペースで

順調な滑り出し
幸先いいスタートだと考えながら
そして、スイムアップ
順位にして、スイムアップ60位くらい

長い旅の幕開けは、過去最高の出だしでした

ここからが勝負です

ナンバーと息子の名前を書き込み
バイク、ラン装備の預託完了

しばし、精神統一の時間

レースのシミュレーションをしたいところですが、全てが未知の領域
残念ながら、想像が追いつかず、シミュレーションどころではありません

この一年間やってきたこと
息子への想い
自分を奮い立たせます

・・・

しばらくすると、会場にアナウンス

前日からの強風により波の高さが2m近くと、スイムの開催が危ぶまれましたが
無事に開催のアナウンス

会場から拍手があがりました

と共に、海辺に移動するトライアスリートの軍勢

さぁ、スタートラインです

大海に向かう屈強なトライアスリート達

僕はこの瞬間が大好きです（慣れました

未知の領域に対する不安と喜び
ストロングマンへの挑戦
高鳴る鼓動

・・・

・・・

・・・

フォォォオオオン・・・
スタートホーンが鳴り響きます

「○○○ー！（息子の名前）」

そぉ雄たけびを上げると、僕は高波の海原に、飛び込みました！

さぁ、制限時間13時間半の旅が始まりです

完走して、ゴールでも息子の名前を叫びたい